天啓

中の島公園のバラが咲く頃
美術館の「天目茶碗」を見に行って
美女に出会った 唐加彩俑女
ふっくら結いあげた髪
あどけない顔
流れる裳裾に残る朱色
胸元の遊ぶような軽い指先
すぐにも 話しかけてきそうな口元

国宝の曜変天目より
飛青磁の壷より
私は この俑女に魅かれて
たびたび 美術館に行った

息子の見合いの席を
美術館の喫茶室に決めたのは
天啓だったのだろうか
見合いは 成功した

美術館のガラスケースからぬけだし
俑女は我が家のキッチンに立っている
味噌汁の味を決めかねて
お玉を持ったまま 小首をかしげている
かわいい 大事な 我家のお嫁さん





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