おはよう
「おはよう」たった四文字の言葉なのに
それが言えない 十八歳の貴方にむかって
「おはよう」毎朝 私は呼びかけた
日が経ち 季節が変わっても
黙って食卓につき 食事をした
一年が過ぎ 二年が過ぎ
卒業に近い四年目の ある朝
戻ってきた返事「おはようございます」
どきりとしたが さりげなく
私も返す「おはようさん」
その時の感動を忘れない
水滴が 岩を穿つように
言葉が 意味をもつためには
長い 長い時間が必要なのだ
朝の食堂に差し込む
明るい光の中で考える
「始めに 言葉ありき」
その言葉は きっと
「おはよう」だったのではないかと
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