逆縁
ストーブの上で
笹がれいを焼いている
菜緒ちゃんの おばあちゃんが
丹後の由良から 電車をのりついで
届けてくれた
菜緒ちゃんは 肺炎で四つで死んだ
通夜の晩 団地の屋上から
菜緒ちゃんの笑顔のような
まんまるな お月様が昇っていった
ブランコ 砂場 すべり台
公園に横付けされた霊柩車にすがって
「行かないで!」
菜緒ちゃんのお母さんが叫んだ
公園で もっともっと遊びたかっただろう
神様はどうして 一番かわいいものを
一番大切なものを 奪っていくの
「お世話になりました」と
おばあちゃんが届けてくれた
この笹がれいの身のうすさよ
幸うすかった菜緒ちゃんのような
それなのに 私は その身を食(くら)う
神様のように 人もまた残酷なものなのか
丹後の由良で乾(ほ)された
掌のようにうすい”かれい”よ
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