この町で 一番はじめに露草の咲きだす道は
昼顔が びっしり からまる駐車場の塀に沿い
おしろい花の群がる崖っぷちで終わる

朝刊と夕刊の配達 昼は集金で歩き
この町の一本 一本の道を足で覚えた
季節ごとに咲く花々に
こごえる心や ふきだす汗をいやされて

いつの夏だったか 歩き疲れて
松の木陰に入り込み 汗をぬぐっていた
急にさしこんできた痛みに うずくまると
蝉の声が遠のき 下腹から
血が流れはじめた気配がした
一気に坂道を下り
夜の病室で 掻爬をうけた
白い木槿のゆれる道を
ゆっくりと 一人で帰った

むくげが散って 金木犀が匂いだすと
失くした子供を いとおしく思う日がある
たたずむと 家並みのむこうに青い海が見える





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